よるのむこうに
初めて出会ったころの天馬を思い出す。
あのころ、天馬はいつも退屈しきったような顔をしていて、食べることと寝る場所の確保にしか興味がないように見えていた。
何ものにも執着しないその態度は危うげで、私はそんな彼を見るたびにぼんやりとした不安を感じていた。明日には会えなくなってしまうかもしれない。来週にはいなくなっているかもしれない。
けれど、結局いなくなったのは私の方で天馬ではない。
結果から見ればいついなくなるかわからないような根無し草の天馬は私なんかよりもはるかに誠実だったということになる。
おかしな巡りあわせだ。
「天馬」
「何だよ」
初めて出会ったあの日、酔っ払いが私にからまなければ、私達は今もお互いを知らなかっただろうか。
あの中華料理屋でから揚げを食べた日、私が天馬を家に誘わなければ私達は今も時々顔を合わせて奢ったり奢られたりするだけの関係だっただろうか。
高校教師と自称パチプロだった私達は……今、ここでこうして隣り合っている。
私はリウマチになって職を失って、大好きな男の隣にいる。
そして天馬はあれほど好きだったパチンコをする暇もないほどバスケの練習に明け暮れ、そして今はプロのバスケットボール選手としてアメリカにわたろうとしている。
四年前の私達は、今の私達の姿を想像だにしなかった。それぞれの人生をそれまでの路線どおりに生きるのだと信じて疑ってもみなかった。
それが、変わった。
私達は出会い、結構長い期間を喧嘩はすれども別れることなく一緒に暮らした。