よるのむこうに
そして私の人生は突然リウマチによって闇に閉ざされた。
病気そのものも辛かったけれど、それよりも辛かったのは自分の人生を生きられなくなることだった。
私に残された人生はただの消化試合に過ぎず、私は今後数十年を苦しみに耐えるだけ。私にはもう何もない。そう思ったこともあった。
けれど今、何もないはずの私の手は天馬の大きな手に包まれている。いや、つかまれている。
リウマチになって教師を辞めざるをえなかったことは今も苦しいし悔しい。納得なんてたぶん一生できない。
でも、そんな私の人生が本当に消化試合なのかと言うと、案外そうでもないみたいだ。
お金もないし若くもない。すでに健康でさえないけれど、今、私の人生はどういうわけか自分の目指していた理想とは別の幸福に彩られている。
「おい、見ろよ」
天馬がシートから身を起こして小さな窓の外を指差した。
窓の外には日の出だろうか、甘い紫に染め上げられた雲がどこまでもどこまでも広がっている。ときおり雲の隙間からのぞく太陽の金色の光が細い筋を作ってきらきらと雲の上できらめいていた。
私はその眩しさに涙が出そうになった。
目を細め、私の涙に気付かないまま窓の外を眺めている天馬の指先を確かめるように指をからめた。天馬はそれが癖になっているのか、自然と私の指を握り返した。
「きれい……」
「ああ、すっげえな……」
あまり景色に感動することのない天馬も、初めて見る荘厳な夜明けに見入っている。