よるのむこうに
「どうしてそうなりたいかっていうと、自分の大事な人が困っているときに、いいよ、俺に頼れよって手を差し伸べられる自分でいたいから。
稼いだ金で好きなものを食うのもいいさ。
欲しいものを好きなだけ買うのも気持ちがいい。
でも、大抵の人にとって金があればって泣きたいほど悔しく思うのはショッピングのときじゃないんだ。
大事な誰かが取り返しのつかないことになってるときに、金がなくて時間がなくて、力がなくて……何の力にもなれないときが一番キツいんだよ。金が欲しいって心底思うのはそういうときだ。
青くせぇなって思うかもしれないけど、俺はそういう人なわけ。
そして俺は、夏子ちゃんのことはもう友達だと思ってる。夏子ちゃんは俺の『手を差し伸べたい人』にもうなっちゃってる。そっちはそうは思ってくれていなかったみたいだけどね。
金と俺の力で君の一身上の都合が動かせるかどうかはわからないけれど、せめて聞かせてよ。
情けない思いをさせないで欲しい」
「……そんな、一回会っただけなのに」
「時間は問題じゃないよ。俺が誰に対してどう思うかは完全に好みの問題だから。
……で?事情を聞かせてくれるの、聞かせてくれないの」
強い意思を秘めた瞳に見つめられ、私は自分の、年上としてあるべき矜持が膝をつくのを感じた。
私はバカだ。周囲が何も見えていなかった。
周囲が見えないまま、天馬だけはなんとかしてあげたくて考えなしに動いて、周りを傷つけてしまった。
「ごめん」
「謝ってほしいんじゃなくて頼って欲しいって言ってるんだけど。まだ伝わらないかな」