よるのむこうに

私はうつむいて額に手を当てた。

気が弱っている。まだ闘病は始まったばかりなのに。
どうして私がと思う気持ちが強すぎて、まだちゃんと現実に向き合えていない。。

私は目を伏せて必死になって涙をこらえた。


別れたいわけないじゃない。こんな、まだ1回しか会ったことのない彰久君に頭を下げて、お願いしますなんて言いたいわけないじゃない。

どうして私が。
何がいけなかったの。

悔しくて悲しくてたまらなかった。無性に何かを恨みたくて、でも何を恨んでいいのかわからなかった。ただ闇雲に暴れまわる感情の波を飲み込んで、私はただ踏ん張って立っているしかない。

彰久くんはうつむいてぎゅっと自分の手を握り締めている私を黙って待ってくれていた。
彼の前に置かれたハーブティーの氷がとけだして、透明な水の層を作っている。


「病気に、なったの。私が」


やっとそう口にした私の声は、押し殺されて私の声じゃないみたいに低くかすれていた。
彰久君はその大きな瞳がこぼれそうなほど大きく目を見開いた。


「……マジで、」

私は小さく頷いた。
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