背伸びして、キス


一人で、あそこにいるよりはずっと良かったかもしれないくらいに思えて。
それくらい、時東さんの話術は自然で穏やかだった。



「オーナーに頼んで、キッチンもさせてもらえばいいのに」

「む、無理ですよ」

「まかないとか。俺、食べたいな。一華ちゃんの料理」



鳴らないスマホ。
窓際のこの席から見える外には見えることのない姿。




「この後、どうする?」

「え・・・」

「駅前のさ、イルミネーション、今年すごいらしいよ。身に行こうよ」

「・・・イルミネーション」



洋介さんと行きたいって思ってた場所。
ここだって、洋介さんときたかったところ。




目の前に座ってほしいのは、隣にいてほしいのは、洋介さんなのに。





どうして、いてくれないんだろう。





どうしてここに、いないんだろう。





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