背伸びして、キス
俺も、酔っていたのかもしれない。
ネクタイを引っ張られ、身を引くことも忘れそのまま吸い寄せられるように唇が重なった。
柔らかい感触と、淡く香る酒の匂い。
「――――っ」
呆気にとられ、時間が止まったような気がした。
がさっ
ものが落ちる音でハッとして身を引く。
戸惑いながら視線を向けると・・・。
「あ・・・」
「い・・・足立・・・」
なぜこんな時間にここにいるのか。
目を見開き、呆然として立ちすくむ一華の姿に、一気に現実に戻された。
一華は、落とした鞄を拾い上げるとなにも言わずに踵を返し走っていってしまった。
「足立!」
追おうとした俺の服を、工藤さんが掴んで引き止めた。