Where it is stuckー滞っている場所ー
枕崎と平子
「すみません、遅れてしまって」
平子は、蒼龍の店主であるりーさんに慌てた様子で謝った。
りーさんは、柔らかな笑みを浮かべ良いんですよ、とでもいうように、優しく首を振った。
この店主をりーさんと呼ぶのには、理由がある。りーさんは、中国人で、日本語が苦手だ。
そんなりーさんに、この店にはじめて来た際に、平子は、名前を聞いたのだ。
しかし、りーさんの中国語は速く、聞き取りずらかった。
その結果、唯一聞き取る事ができたのが、“りー”だったのだ。
もしかしたら、りーは名前ではないのかも知れないが、
りーさんは、“りーさん”と呼ばれるのを、なぜか気に入っている様らしい。
今、そのりーさんは、捜査員達から、熱心に注文を取っている。
りーさんと捜査員達は、なにやら楽しげだ。
平子が、そんな様子をぼんやり眺めていると、平子に急に声がかかった。
声の主は、秋鹿だ。