夫の教えるA~Z
ワケあって私は、彼の前では悲しい涙を流さないと決めている。

クルリと彼に背を向ける。

もう日はすっかり落ち、暗い空に星がチラホラ光っていた。


「…今日はたまたま良かったけど、いつか本当に…アナタがし、死んじゃうと思ったら。
私は……」


口が震えて上手く喋れない。
支離滅裂なのも分かっている……

ああ、もどかしい。

本当は私も
いつもあなたが羨ましくて、妬ましい。

私はアナタほど上手く話せないから。

伝えたい気持ちすら、きちんと伝えることが出来なくて。

それでも、懸命に言葉を紡いだならば、ほんの少しでも彼に伝わるのだろうか。

それとも、私もまた今日の彼と同じように、“能無しだ” と切り捨てられてしまうんだろうか。
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