夫の教えるA~Z
「トーコ」

彼の手が、すっと私の手を引いた。
ベッドに引き寄せられた私は、後ろ向きのまま、彼の腕の中にすっぽりと収まった。

見られないよう、下を向いて顔を隠す。

彼の声が背後から優しく耳に響いた。

「分かったよ、君がそんなに心配なら……
次からは気を付けるようにする。
アイツ、石原部長も…板挟みで辛かったんだろうな。気遣うべきだった」

「…うん」

「そのせいで、
折角の君との時間、
台無しにしちゃったしな……俺のせいだ」

「そんなのは……いいんです。
アナタが無事ならそれで。
ただ、気を付けて下さい。
アナタ一人だけの身体じゃないんですから」

「ああ、……え?」
彼の声が、妙に上ずった。

「え?……あ…」
ハッとして言い直す。

「ち、ちがう。違いますよ?
別にへんな意味じゃなく……」

「ほ?
へんな意味……と?
何それ、分っからないなあ…
詳しく教えて。え、何ナニ?」

わざとらしく尋ねながら、嬉しそうに腕の中の私ごと身体を揺った。


「やっ、ちょっと止め…ちゃんと聞くって言った癖に!」
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