夫の教えるA~Z
ヒョウッ。

駅の構内を一陣の北風が吹き抜けた。


うう、ヒドイよ。

カワイイ娘が寒空にさまよっているっていうのに、自分はまったり温泉旅行なんて………


悲しんでばかりはいられない。
頼みの実家がダメとなると…


途方に暮れた私は、アドレス帳の画面をサーッと送ってみた。

ダメだ。 

クソ忙しい歳末に、友人の家に転がり込む勇気は、ナイ。


ハアァ…
溜め息が漏れた。
何やってるんだろ、私。

クリスマス一色に飾られた、駅前のイルミネーションの極彩飾の煌めきが目に入る。

綺麗だ。


どうせなら、アキトさんと一緒に見たかったな。
でも、きっと彼は今夜、違うヒトと違う街でクリスマスツリーを見るのだろう。


締めつけられる胸の痛みに、ギュッとバッグを抱きしめた。


結局私にはもう、
あの家にしか居場所はないんだ。


……帰ろっかな。


彼の知らないうちに彼の懐から飛び出して、彼の気づかないうちに大人しく待つ…

悔しいよ。

私はなんて無力になってしまったんだろう。


喉の奥から、知らずのうちに熱い嗚咽が込み上げた。
 
「うぇ……っく」

目の前の無数の光が、渦を描いて溶け出した。
それはやがて滲んで形を無くし、私の頬を伝って落ちた。
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