夫の教えるA~Z
「ハハハ…いやぁ、初心者でして」
「え~、そんな風には見えませんよ~、何かやってらっしゃったんです?」

「ええ、まあ、野球を少々」
「キャー、本当だ。胸筋スゴーイ」

「や、やあ参ったな…」

 秋人さんが、スタッフのお姉さんとやたら会話を弾ませながら、ようやく姿を現した。
 困ったように頭を掻き、でも満更でもない様子。

 ちょっとちょっと、この短時間の間になんでそんなになってるの?
 さっさとソコを離れなさい。

 彼のおムネは、トーコのものっ!


 黙って睨み付けていると、
「ああ、トーコ」

 やっと私に気づいた彼が、にこやかに手を振りながら近づいてきた。
 彼女が慌てて胸元を離れる。

 
「行ってらっしゃいませ~。
 アッキー、また後で~」
「じゃあね~」

「ハヤクッ」

 しきりに彼女と手を振りあうオット。
 私はその腕をはっしと引っ掴み、早足でレンタル場を後にした。
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