夫の教えるA~Z
「トト、トーコちゃん。
 何かいきなりハードル高くないすか?」

「え~~、別にフツーですよ。
こんなのはね、やってみて覚えるモノ、初めての時は皆そうなんですよ」

 リフトを乗り継ぐこと3回、私は彼をまんまと山の天辺の最上級者コースに連れてきた。

 鋭角30度の斜面は、上からみると切り立つ崖ように見えている。
 
 青ざめた彼顔を横目に、私はニヤリとほくそ笑んだ。

 クックック…

 これはささやかな復讐。

 さっき言ったのは真っ赤なウソで、ここに立つのは皆上級者ばかり。
 競技用ウェアでバッチリキメた数人には、スレンダーな女性も数人いる。

 フンだ、
 アチコチで色目遣いやがって…

 大衆(とくに女)の面前で雪ダルマになって、たまには恥をかくがいい。

「じゃ、しっかり着いてきてね」

 私は、最低限のレクチャーのみを授け、詳しい説明もそこそこに、青ざめている彼の前で、颯爽とスタートを切った。

「あ、おい!」
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