夫の教えるA~Z
 ああ…いい風!

 急な斜面に緩やかなカーブの軌跡を描きながら、私が操るボードは滑降してゆく。

 降り積んだキメの細かい天然の雪を小気味良い音をさせながら、鋭いエッジが切り取る。

 青い空の下に拡がる辺り一面の銀世界。
 顔に当たる冷たい空気が心地よい。

 ザザアッ。

 目の前に現れた雪のコブでジャンプを決めると、休憩中のボーダーがヒュウッと口笛を吹いて冷やかし、手を振った。

 ああ、来て良かった。
 やっぱり雪サイコー!
 
 いい気持ちで手を振り返す私。

 あれ?
 でも、何か忘れているような…
 
 そう思った時だった。

 「………コォ~…

 トーコオオオォォォォッ!!」

 遠くから、私の名を叫ぶ声が聞こえる。
 
 その声はまさか…

 恐る恐る振り返った私の目に映ったのは、直滑降で突進してくる雪煙。
 
「教えてくれ~~、どうやって止まったらいいんだ~~」

 それは、哀れな叫び声をあげながら、ものすごいスピードで近づいてくる。

 シマッタ、ヤツの存在を忘れてた!  
 そう思った時は遅かった。

「わっ、わっわ」

 ウワーーーー…
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