夫の教えるA~Z
 「トーコぉぉっ、避けろ~っ!」

 彼が必死で叫んでいる。

 しかし恐怖に身体が硬直してしまった私は、動きたくても動けない。

 ヒャアアア…もうダメッッ!
 
 私はただギュッと目を閉じた__


 バフッ。


 あれ?衝撃が……ない。


 恐る恐る目を開けると、何故か私の大好きな定位置、彼の胸の中にいる。

 どうやら、間一髪のところで彼は大きく両手を拡げて私を抱き止めてくれたらしい。

 ホッとしたのも束の間。

 私達は1つになり、勢いはそのまま、ツルツルの雪面を転がっていった。

 グルグルグル…

 ウワアアアアッ…
 
 回る景色に叫び声。

 私達は、人を避けて右に大きく逸れながらネットを倒してコースアウト、さらに林間を転がってゆく……


 ドンッッ。


 やがて、大きな音とともに木の幹に引っ掛かり、やっと止まることができた。

 
「イ…タタタ…」
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