夫の教えるA~Z
 勢いで雪に押し倒し、ところ構わずキスをする。

「ちょっ…そういうのは俺の専売特許で…」

「良かったよお…」
 
 本当に、本当に良かった。
 照れながらも彼はバツが悪そうに呟いた。

「困ったな、かえって悪いことした気がする……あ、コラ」
「大好き」
 
 少しの間彼を見つめると、改めて深く唇を重ね合せた。
「バカトー…コ……んんっ!?」


 と、満更でもなさそうだった彼が急にジタバタし始めた。


「や、止めろ、止めなさい。
こんなトコで…こら、止めないか!」

「やだ、そんなコトいって、
アキトさんの……照れ屋さ…ん」

 だって嬉しいんだもの。
 貴方とまた、こんな風にできることが。恥ずかしいとか、そんなコトはどうでもいい。
 私はただ、今ここにいる彼を目一杯に感じていたい…

「違う、違うって…(う、後ろっ)」

 口づける程に彼はバタバタと暴れ出した。
 よく見ると、手振りとアイコンタクトで必死に何かを訴えている。

 
 何だろ、え~と……

 ウシロ、
 ミロ、
 ハヤク。

 ?????

 不思議に思いながらも、起き上がって背後を振り返ると___


「…谷に人が落ちたらしいってんで、きてみたんじゃけど」
「あんたら、何やってるんです」

 スタッフ用のオレンジの繋ぎを着た、地元のオジサン達が、妙な顔をしてこちらを眺めていた。

「す……」

「「スイマセン……」」
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