夫の教えるA~Z
「わっ」
 そうして、素早く私を長い腕に絡めとると、起き上がって逆に私を膝上に寝かせた。


 あー、やっぱり……そうなっちゃうんだ。にしてもまだ10時だし、ちょっと早くないですか?

 思いながらも流れに応じ、すっと目を閉じキスを待つ。

 が。
 いつまでも期待どおりの感覚が落ちてくることはなく、彼はそのままの姿勢で、ずっと私を撫でている。

 ………あれ?
 
 うっすらと目を開けると、彼は私の髪を鋤きながら優しく笑んだ。

 察したようにポツリと一言。

「トーコ。
俺な、今日は…ちょっと嬉しかったんだ」

「はえ?
 ……っと……
 ああ!そりゃあ、見事にスノボはキマりましたからね。ま、それというのも私のコーチングがあったからな訳ですが」

「いや、じゃなくて」

 得意気に鼻を膨らませた私に、彼はクスッと笑いかけた。

「今日の君のコトさ。目移りした俺に妬いて怒ったり…
死んだと勘違いして泣いたりさ」

 あの事か!
 
 思い出すのも恥ずかしい。
 火照った顔を隠すため、私は慌ててそっぽを向いた。

「え…、い、いや。あれはその…
あの……必死で…色々とゴメンなさい」

「いやな、だから嬉しかったんだって。
 これまで…どこか気になってはいたんだけど、それでやっと気がついたんだ」
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