夫の教えるA~Z
「ささどうぞ、一口だけでも」
「…いいよ、今は」

「そだ!なら、私が食べさせてあげる。
 “あーん”して?“あーん”って…」
「…いいってば」

 頬を染め、片手を上げて、箸先の煮物を拒否するアキトさん。

 フフフ…アキトさんったら照れちゃって。
 照れ屋(?)な彼への “あーんして” は、『②テーブルで手が触れ合う』に匹敵するシチュエーションではないか!


「ね、そんなこと言わないで?スゴく美味しいから…」

 私は遮る手を器用に避けると、難しい顔で書類を睨む彼の口元に箸を寄せた。
 ついでに、我々の距離も少し縮めてやる。
 
「後で食うから、いいってば…」
「だーめ!」

 顔をそむけた口元を、私の煮物が追いかける。
 2、3回繰り返すうち、とうとう彼はブルブル震え出した。


 そして___


「だぁぁっ、だから今はいいっつってんの!
 ちょっと独りにしといてくれ!!」
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