夫の教えるA~Z
 翌朝。

 う~ん、遅いなあ。

 情けないことに、結局寝付けず悶々として朝を迎えた私は、早朝から超ボリューミィな朝御飯を用意してしまっていた。
 しかし、待てど暮らせど、いつまで経っても彼は部屋から出てこない。
 
 そうだ!

 夕べの欲求不満も手伝って。
 痺れを切らした私は、少~し露出度を高くして、彼の部屋へと乗り込んだ。


 「おはようゴザイまーす…」

 ノックの後、恐る恐るドアを開ける。
 驚いたことに、彼は昨夜デスクに向かった姿勢のままでいた。

 背後からそっと近づくと、書類の山を前にして、なにやらブツブツと呟いている。

「う~…ん、ここがこうで…それで…」

 うそ、このヒト、夕べの白シャツのまんまだよ。
 ヒクヒクと鼻を動かしてみると、おフロにも入ってないようだ。
 顔を覗きこんでみると、

 うおぅっ、無精ヒゲ!

 
 常にオシャレで清潔好きなオオカミさんには、まず有り得ない状態だ。

 つまり、それくらい集中してるってことだろう。
 何せ、さっきから脇腹をこちょこちょしたり、覗きこんで変顔してても全く気づかない模様。

 そんな秋人さんを眺めるうちに、

 きゅうううん…

 ナゼか私の中に、摩訶不思議な母性本能が沸き上がった。
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