夫の教えるA~Z
彼は、少しの間奇妙な顔つきをしていたが、すぐに微笑み、問いかけるように首を傾げた。
「ああ、いえ、珍しいなと思ったもんで。夏子《あいつ》、料理とかホント嫌いで、家でもキッチン立ったとこなんて見たことなかったから」
春日《かれ》はあっさり警戒を解いた。
「ああ、確かにそうですねー。夏子さんは、正直、あんまり得意じゃないみたい。こないだも、みりん取ってって頼んだら、間違えてだしつゆ渡されちゃって…」
「ははは、やりかねないや。あいつ、ずっと実家暮らしで飯とか全部母頼みで。
えーと、その教室はご自宅で?」
「ああそれは…ここにスタッフ用の小さなキッチンがあるので、そのスペースを借りて。ほんの時たまですけどね~」
その後も俺は、淡々とそのネタで話を振り続けた。彼もまた、特に屈託もなくそれに答える。
そんな調子で雑談が成立していた時、ふとした拍子に彼に尋ねた。
「指輪、されないんですね」
「え_____」
虚を突かれたように、一瞬彼が固まった。
俺の左手をチラリと見る。
ちなみに、俺も今、指輪はしていない。筋トレ中、指を痛めたくないから、一時的に外してある。
しかし彼は、それを確認すると安心したように話始めた。
「…ええ。
苦手なんですよね、指輪。水仕事するもんで手が荒れちゃって。それに…」
「それに?」
「いかにも “結婚してます” って感じが好きじゃなくて。束縛感あるってか。
ヨメは“ちゃんとしとけ”って煩いんですけどね…
…大神さん?」
「ああ、いえ、珍しいなと思ったもんで。夏子《あいつ》、料理とかホント嫌いで、家でもキッチン立ったとこなんて見たことなかったから」
春日《かれ》はあっさり警戒を解いた。
「ああ、確かにそうですねー。夏子さんは、正直、あんまり得意じゃないみたい。こないだも、みりん取ってって頼んだら、間違えてだしつゆ渡されちゃって…」
「ははは、やりかねないや。あいつ、ずっと実家暮らしで飯とか全部母頼みで。
えーと、その教室はご自宅で?」
「ああそれは…ここにスタッフ用の小さなキッチンがあるので、そのスペースを借りて。ほんの時たまですけどね~」
その後も俺は、淡々とそのネタで話を振り続けた。彼もまた、特に屈託もなくそれに答える。
そんな調子で雑談が成立していた時、ふとした拍子に彼に尋ねた。
「指輪、されないんですね」
「え_____」
虚を突かれたように、一瞬彼が固まった。
俺の左手をチラリと見る。
ちなみに、俺も今、指輪はしていない。筋トレ中、指を痛めたくないから、一時的に外してある。
しかし彼は、それを確認すると安心したように話始めた。
「…ええ。
苦手なんですよね、指輪。水仕事するもんで手が荒れちゃって。それに…」
「それに?」
「いかにも “結婚してます” って感じが好きじゃなくて。束縛感あるってか。
ヨメは“ちゃんとしとけ”って煩いんですけどね…
…大神さん?」