夫の教えるA~Z
ピーー…どころか、奥さんにひと触りもできず、涙に暮れたバレンタイン・デー。

翌朝、俺は素早く行動した。
支社長ともなれば、本社への用事は山ほどある…のだが、ここはあえて休暇をとり、朝イチの新幹線で東京へ。

ついでではない、という本気度を示すアピールだ。こういうのは、案外大事だ。

会社に着くまえに、俺はあるところへ寄った。対籠手川まり子用の小道具を手にいれるために。

こんなもの、彼女にとっては子供だましかも知れないが。


「あら、思ったよりはやかったのね」

実はうちの会社には、屋上のうえの隅に小さなお社がある。
その対面くらいにナゼかポツンと増設されたプレハブ小屋、それが、知る人ぞしる会社の深奥部、在庫品質管理室だ。

トタンの戸を叩き、ビーズでつくった暖簾を潜ると、彼女はかわらずそこにいた。
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