夫の教えるA~Z
昼間にもかかわらず、暗めの灯りの中、彼女は部屋の奥に座っていた。
全体にバイオレットがかったライティングは、さながら占い師の館のようだ。

彼女は、遠いつも、はるか昔に作られた、ダサくて誰も着ないような女子社員用の制服を着、その上にストールを纏っている

うっ。
独特のオーラに気圧されながらも、俺は何とか背筋を張った。

「どうも、久しぶり。
俺が何故ここに来たかは…分かってるよな」

彼女は黙ったまま、ニコリと微笑んだ。といっても、笑ったような気がしただけで、瞬きひとつしないのだ。

「単刀直入に言おう。俺に、もしくは彼女にかけた呪いを解いてくれないか。
もしなにか、気に入らないことがあったのなら…っ!」

彼女が、眼で俺の言葉を制止した。
というか、彼女の一睨みで声が出なくなってしまったのだ。

「まあ、落ち着きなさい。せっかく久しぶりの再会なんだからさ。お茶のひとつでも淹れるわよ」
「あ…が…」

彼女がすっくと立ち上がる。
俺は金縛りにでもあったかのように、みじろぎひとつできず、マヌケ面を晒して立ったままだ。
< 252 / 337 >

この作品をシェア

pagetop