夫の教えるA~Z
「さあーて、式も佳境に入って参りました。
さて、お次は…おやぁ?
ここで、たいへんなVIPがお祝いに駆けつけてくれたようですよ~…
なんと!」

デデデデデデデデ…

「さあ、登場していただきましょう!京◯タワーのマスコットキャラクター、」

妙なドラムロールの音とともに、厚い扉がゆっくりと開く…

狭い視界にキラキラ光がさしこんだ。
いっぱいの拍手に包まれて、私はレッドカーペットに歩きだした。

背が低いというだけで、学祭のサークルから会社のイベントまで常に着ぐるみ係、中の人歴ン10年の、着ぐるみマスター・トーコにかかれば、結婚式のパフォーマンスなどお茶の子さいさい、お手のものだ。

まず、テテテと花嫁に駆け寄った私は、花嫁姿の実果ちゃんの肩を軽くトントン、そのあとハグ、チューをする。
「やだっ、タ○ワ君ったら💗」

幸せになるんだよ、実果ちゃん。

それから新郎、白木クンに近寄ると、同じように肩を叩き、ぐりぐり肘でつつく。

「あははー、痛いよ、タ○ワちゃん。
…ぐほっ」

その後、頭のタワー部分で頭突きを加える。

白木、実果ちゃんを泣かせたら承知せんからな。どこかの誰かさんみたいにな!

しっかしこの着ぐるみ、なんて重たいアタマなんだ。着ぐるみの天才・トーコを唸らせるほどの難易度。
さっきのバイト君のこと、悪かったな。
人件費削減の煽りとはいえ、介添人もなしでトイレにいくなどと、かなりの自殺行為だっただろう。
さてはあやつ、ああ見えてなかなかの手練れとみた…

身を切る頭突き攻撃の後、ちょっぴりフラフラしながらも客のテーブルを回りながらで愛嬌を振り撒く私。

ちなみに、さっきの意地悪女どものテーブルでは、デザートのお裾分ケーキ(ウェディングケーキを分けたヤツね)を、目の孔から食ってやったぜ!

そんな様子で会場を一周し、そしてとうとうやって来た。
元の私の席、すなわち大神秋人のテーブルに。
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