夫の教えるA~Z
「うっ、うっ、ボク、23年生きてきて、初めてあんな理想の人に、出会ってしまったんです。
大神さんにそっくりのお顔、スレンダーな胸、そして…あの頬への痛み。
あの日の事を思うと僕はもう…ああっ」
おーい、なんかヤバいこと言ってる人がいるよー。
頭の中で、誰ともないだれかに声をかけながら、私は彼の話をウンウンと首を振って聞いていた。
彼はもう、次から次へと、矢継ぎ早に言葉を放つ。
「この世にあんなにうつくしい人はいませんっ。ね?奥さんもそう思うでしょ?」
「う、うんそうだね。そのうえ親切で面倒見もいいし、物怖じしない、さっぱりした頼れるお姉さんって感じで…」
「ええっ、そんな!そのうえ性格まで完璧だなんて、どんな女神さまなんですか!?そんな女《ヒト》、この世に存在してていいんですかっ」
再び前のめりに、テーブルの上に乗り上げてくる松田君。
うう…絡みづらいこのテンション。珍しく冴えている今日のトーコの精神力さえ持っていかれてしまいそうだ。
恋ってそんなものなのね…きっと。
と、勝手に盛り上がっていた松田君が、急にシュンと俯いた。
「なのに僕…」
「な、何。どうしたの」
「僕ときたら…あのヒトにもう一度逢いたいって、1秒でもいい、逢ってお話したいって、そればっかり考えてしまって、とうとう仕事も手につかなくなって。
…情けないです。会社、入ったばかりなのに、支社長に、大神さんに目をかけてもらって、ちゃんと仕事覚えなくっちゃ、頑張らなくっちゃいけないのに…」
「松田くん」
さっきからの感情の乱高下に振り回されていた私も、これには少し、ウルッと来てしまった。そうだよね、彼、まだ23歳の新人君だもんね。よーし、ここはひとつ人生の先輩として、何かよきアドバイスを…
「松田君あの…」
「奥さんっ」
がふっ!
彼を元気づけようと、肩に手をおこうとした瞬間、彼が急に顔を上げたものだから、私はしこたま顎を打ち付けてしまった。
「あ、す、すみませんっ、僕ってそそっかしくて」
「う、いいよいいよ何が親近感湧くわ…で、何?」
大神さんにそっくりのお顔、スレンダーな胸、そして…あの頬への痛み。
あの日の事を思うと僕はもう…ああっ」
おーい、なんかヤバいこと言ってる人がいるよー。
頭の中で、誰ともないだれかに声をかけながら、私は彼の話をウンウンと首を振って聞いていた。
彼はもう、次から次へと、矢継ぎ早に言葉を放つ。
「この世にあんなにうつくしい人はいませんっ。ね?奥さんもそう思うでしょ?」
「う、うんそうだね。そのうえ親切で面倒見もいいし、物怖じしない、さっぱりした頼れるお姉さんって感じで…」
「ええっ、そんな!そのうえ性格まで完璧だなんて、どんな女神さまなんですか!?そんな女《ヒト》、この世に存在してていいんですかっ」
再び前のめりに、テーブルの上に乗り上げてくる松田君。
うう…絡みづらいこのテンション。珍しく冴えている今日のトーコの精神力さえ持っていかれてしまいそうだ。
恋ってそんなものなのね…きっと。
と、勝手に盛り上がっていた松田君が、急にシュンと俯いた。
「なのに僕…」
「な、何。どうしたの」
「僕ときたら…あのヒトにもう一度逢いたいって、1秒でもいい、逢ってお話したいって、そればっかり考えてしまって、とうとう仕事も手につかなくなって。
…情けないです。会社、入ったばかりなのに、支社長に、大神さんに目をかけてもらって、ちゃんと仕事覚えなくっちゃ、頑張らなくっちゃいけないのに…」
「松田くん」
さっきからの感情の乱高下に振り回されていた私も、これには少し、ウルッと来てしまった。そうだよね、彼、まだ23歳の新人君だもんね。よーし、ここはひとつ人生の先輩として、何かよきアドバイスを…
「松田君あの…」
「奥さんっ」
がふっ!
彼を元気づけようと、肩に手をおこうとした瞬間、彼が急に顔を上げたものだから、私はしこたま顎を打ち付けてしまった。
「あ、す、すみませんっ、僕ってそそっかしくて」
「う、いいよいいよ何が親近感湧くわ…で、何?」