夫の教えるA~Z
そんな私の心の内を知ってか知らずか、憐れっぽい目をウルウルさせて、じっとこちらを伺う松田君。
私は小さく首を横に降った。
無理よ、私には無理…
ごめんね松田くん。
今の君には絶対言えないけれど、夏子さんの中のアナタの第一印象、最悪なの…
例えそんな場を設けたとして、火に油を注ぐことは自明の理。
心に重たい鉛を抱えつつも、私はやんわりと彼の頼みを断ることを試みた。
「あ、あのさあ、松田くん。何も特別にそんなことしなくても、うちのジムの会員になればいいんじゃない…かなあ。夏子さん、格闘系と筋トレのインストラクターだからさ。
そうしたら、毎日だって会えるわけだし、何も私ナドを頼らずとも、仲良くなれたら自分からお誘いすることだって_____」
「無理ッすよ…
だって僕、今の状態で、ひとりでお姉さんのジムに通ったりなんかしたら、きっと挙動不審な行動とっちゃいますもん。下手したら、ストーカーにでもなっちゃいそうな勢いなんす…
そうしたら皆さんに、余計迷惑かかっちゃう」
何、それは困る!
私は私の職場時間を、なるべく平穏に過ごしたい。
彼の意外な自己分析の冷静さに感服しながらも、私は言葉を濁した。
「うーん、…そう、ねえ。でも、夏子さんが」
「お願いします、僕にチャンスをください!
僕、不純な気持ちばっかじゃなくて、あの日の非礼を謝りたい気持ちもあるんです」
「うー…ん」
「やっぱりダメ…ですか?
僕、あんなことして、嫌われちゃってますか」
一縷の望みにすがろうと、涙に潤んだ双眸が、私に向かってキラキラと輝いている。
きゅぅーん…
この時、私のハートが高鳴った。
「よーし分かった!
大丈夫、このトーコにまっかせなさーい、
ふたりの仲、何としても取り持ってみせましょうとも!」
「ほ、ホントですか!?」
「無論」
「奥さんっ」
「松田くんっ」
ガシッ。
向かい合う右手と右手が、今、しっかりと握られた。
と同時に、
「まぁ~ つ~ だぁ~~」
開け放してあったリビングの入り口から、新たな闖入者の声が。
あ、ヤバ…
時刻はまだ夜の8時。
慌てて松田君の手を振り離した私が次に見た光景は_____
半端ない怒りのオーラを漂わせるアキトさんに、
「あ、大神さん♥️」
その顔色を全く読まずに、パタパタご主人様に尻尾を振るように嬉しそうな顔を向ける松田くん。
「トーコからのラインに気づいて慌てて戻ってみれば…松田、何でお前はまた、性懲りもなく俺の家に上がり込み、あまつさえ、俺の奥さんの手を握っている?」
「え?ああ、実はですね。僕、奥さんにお願い事が…」
「カエレーーーーーーッッ」
きゃーーーー…
このあと、めちゃめちゃお仕置きされた。
私は小さく首を横に降った。
無理よ、私には無理…
ごめんね松田くん。
今の君には絶対言えないけれど、夏子さんの中のアナタの第一印象、最悪なの…
例えそんな場を設けたとして、火に油を注ぐことは自明の理。
心に重たい鉛を抱えつつも、私はやんわりと彼の頼みを断ることを試みた。
「あ、あのさあ、松田くん。何も特別にそんなことしなくても、うちのジムの会員になればいいんじゃない…かなあ。夏子さん、格闘系と筋トレのインストラクターだからさ。
そうしたら、毎日だって会えるわけだし、何も私ナドを頼らずとも、仲良くなれたら自分からお誘いすることだって_____」
「無理ッすよ…
だって僕、今の状態で、ひとりでお姉さんのジムに通ったりなんかしたら、きっと挙動不審な行動とっちゃいますもん。下手したら、ストーカーにでもなっちゃいそうな勢いなんす…
そうしたら皆さんに、余計迷惑かかっちゃう」
何、それは困る!
私は私の職場時間を、なるべく平穏に過ごしたい。
彼の意外な自己分析の冷静さに感服しながらも、私は言葉を濁した。
「うーん、…そう、ねえ。でも、夏子さんが」
「お願いします、僕にチャンスをください!
僕、不純な気持ちばっかじゃなくて、あの日の非礼を謝りたい気持ちもあるんです」
「うー…ん」
「やっぱりダメ…ですか?
僕、あんなことして、嫌われちゃってますか」
一縷の望みにすがろうと、涙に潤んだ双眸が、私に向かってキラキラと輝いている。
きゅぅーん…
この時、私のハートが高鳴った。
「よーし分かった!
大丈夫、このトーコにまっかせなさーい、
ふたりの仲、何としても取り持ってみせましょうとも!」
「ほ、ホントですか!?」
「無論」
「奥さんっ」
「松田くんっ」
ガシッ。
向かい合う右手と右手が、今、しっかりと握られた。
と同時に、
「まぁ~ つ~ だぁ~~」
開け放してあったリビングの入り口から、新たな闖入者の声が。
あ、ヤバ…
時刻はまだ夜の8時。
慌てて松田君の手を振り離した私が次に見た光景は_____
半端ない怒りのオーラを漂わせるアキトさんに、
「あ、大神さん♥️」
その顔色を全く読まずに、パタパタご主人様に尻尾を振るように嬉しそうな顔を向ける松田くん。
「トーコからのラインに気づいて慌てて戻ってみれば…松田、何でお前はまた、性懲りもなく俺の家に上がり込み、あまつさえ、俺の奥さんの手を握っている?」
「え?ああ、実はですね。僕、奥さんにお願い事が…」
「カエレーーーーーーッッ」
きゃーーーー…
このあと、めちゃめちゃお仕置きされた。