夫の教えるA~Z
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「え?年下は好きかって?
そうねえ、別に私、男の年とかあんまり気にしたことないけど…」

次の出勤日。
私は、いつものランチタイムに夏子さんに話を振ってみた。いきなり松田を出すのは危険だ。まずは慎重に、それとな~く夏子さんの好みをリサーチすることから始めることにしたのだが、意外にも彼女は、話に乗ってきてくれた。

「え、じゃあどんなのがタイプかって?
う~んそうねえ、どっちかっていうと、女顔ってゆうの?カワイイ系のコが好みかな。筋肉とかも、あんまりついてない方がいいわ。マッチョでさ、高圧的な喋り方するひとはキラいなのよ。ホラ、私に付いてるクレーマーって、そういうヒトが多いじゃない。だからね。逆に、敬語でやんわり、静かな話し方が好きかも。
あ、身長は低くていいわ。自分が高いからさ、結構コンプレックスなのよ。
それから…
そう!私、家事苦手だから、お料理とお掃除が上手な男《ヒト》がいい!
これは必須ね、外せない」

「ウワー、何て言うか…随分具体的なんですね」

「そりゃそうよ。
あのねトーコちゃん。この年まで女一人で生きてるとさ、色んな情報入ってくるし、実際に経験して幻滅したりして、男の理想はより具体的に、脳内に具現化されてゆくわけ。
あ、だめだわ、自分で言ってなんかグサッときた…」
「ああ夏子さん、落ち込まないで!」

「いいの、いいのよトーコちゃん。最近どうも自虐的でいけないわ…
でも、どうしたの?いきなりそんな話振ってさ」
「え、あ、ああ、あの…
実はですね_____」

私は、簡単にコトの経緯を説明した。もちろん松田の名は伏せて、単に、20代のカワイイ系の男の子だと紹介した上で。
(これは別に嘘じゃない。実際、松田君は、女の子っぽいカワイイ顔立ちをしているのだ)

「ふーん、そうなんだ。へー、私に一目惚れ。ふーん」

ドリンク片手に素っ気なく答えてみせた彼女だが、案外、満更でもなさそうな顔をしている。
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