夫の教えるA~Z
私はさらに踏み込んだ。

「あの~、先に断っときますけど、嫌じゃなかったらなんですけど。そのコに、いちど会ってあげたりとかってできますか?実は、向こうからぜひにと頼まれちゃってて…
あ、別に、会ったからって、付き合わないといけないとか、そういうのではないんですよ?あくまでボランティア精神というか、さっぱりきっぱり、正直な答えをあげたらいいというか」

「………。なーんか怪しいなあ。トーコちゃん、さっきから何をそんなに狼狽えてるの?」

う、鋭い。
私はさらに焦って言った。身振り手振りが自然と増える。

「ああ、いやその…
そうだ、ちょうどアキトさん、来週月曜日から出張でいないんですよ。よかったら3人でで飲みに行ったりしてみません?嫌になったら帰ってもらって、ふたりで飲みなおせばいいわけで…ホラ、この間の話の続きも聞きたいですし…」

「…まあ、何か思うところがあるんでしょうけど。
いいわ、トーコちゃんにも何か事情があるんでしょ。
それに、他人なんて実際、会ってみないと分かんないよね。昨今の若いコってさ、大抵礼儀正しい大人しいコが多いけど、中にはこないだみたいな、とんでもないヤツもいるからねー」

「あ、ははは~。ですよね~」

私の冷や汗の量は、すでにピークを越えている。
明らかに挙動が怪しい私に、それでも夏子さんはあっけらかんとして笑った。

「んー、でも知らなかった、トーコちゃんって、結構若い男の子とつるむんだね。でもね、気を付けなさいよ~、
アキトっては、意外と粘着気質でさ、嫉妬深いから~」

「あ、ハイ」
それはよく知ってます。


ともかくも、私は夏子さんとの約束を取り付けることに成功した!
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