夫の教えるA~Z
うん、相槌を打ったトーコに、夏子は続ける。

「でもさ、本当は、ううん、だからこそ今、怖くってたまらないんだ。
松田(あいつ)は”気にしない”言ってくれてるけど…
ほら、次は私が、あちらに挨拶にいくってなるじゃん?そうしたらさ、向こうのご両親は、十以上も年上の嫁なんて、嫌だよねーとか、昔の素行調査とかされたらどうしようとか…
変よね、思いっきりウジウジしちゃってんの。
今になって思うわ。きっと、本当に大事なものがあると、人って迷うのよね、だからくよくよ悩んだりするんだよねぇ」

「松田君とは、話したんですか?その…年齢のこととか、昔のこととか、そういうこと」

「うん、わりとすぐにね。黙ってられないの、そういうの。そうしたらアイツさ、驚きもせずにケロっとして言うの。“あ、僕そういうの全っ然大丈夫ですから”みたいに。
こっちがさ、その背景(バック)にいる親とか、周りのこととか考えてるのが馬鹿みたいに思えるほどに。嬉しい反面、こういうの、世代ギャップっていうのかなーって、逆に落ち込んでみたりして」

「いえいえ、そんなことないですよ、それは何というか、松田君独特の、“あえて空気を読まない強さ”というか、ウツワの大きさというか。彼、夏子さんのことすごく大事に思ってますよ。側から見てて解りますもん。視線とか話し方とか、漂う空気感とかがなんかこう…」

「やだもー、そんな風に言われるとなんか意識しちゃう。
…彼ってばさ、おっかしいの。今回のことになったのだって、「手出ししちゃう前にちゃんとしときたいから」とかいって。私が年齢が気になるって言ったら、「ならなおさら、2人の生涯時間を減らしたくないから」だって。
ねえ、変でしょ。私ってばそんなんじゃないのに。そんな大事にされるお嬢さんじゃなくて、もっと汚い…」
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