夫の教えるA~Z
………むがっ。

 何か顔に柔らかく押し付けるような圧迫感ーー
 く、苦しい。でも何だか甘酸っぱいイイ匂いがする……
 ボクは、ボクの顔面を覆っている暑苦しい感覚の正体を、手探りで確認しようと試みた。

 ふにふに……

「やんっ」
 すると、甲高い可愛らしい声が聞こえてくるじゃあないか。

 ボクは更にソイツを精査すべく、ボクの上でもがいているそれをギュっと捉え、更に入念に手を動かした。

「だ……ダメぇ……」
 
 上から、弱々しい声が聞こえる。

 何これ?スゴク気持ちヨイんだけど。噂に聞く“桃源郷”ってやつだろうか。
 もしかすると、さっき頭を打ち付けたショックで、ボクは今天国にいるのかもしれない……


 しかし、夢に浸ったのは束の間だった。


「‼」


 顔のやーらかい圧迫が取れ、呼吸が楽になると同時に今度は、左太腿に正真正銘のカタい荷重の痛みが走った。


「……何だ………テメエは」 

 目は覚めた。

「ど、どうも……」
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