夫の教えるA~Z
と、脇を抱えられ、宙に浮いたままの奥様が支社長様を嗜めた。
「ちょっとちょっと、アキトさん、まずは足を退けたげないと…彼、喋れないですよ?ホラ、泣いちゃってる…」

 奥さん……

「し、しかしコイツは俺だけに赦された君のムネに越権行為をだな…」
「またまたぁ~!バカなこと言ってないで……悪い方ではなさそうですよ」

 彼女はストンと腕を抜け、ボクに向かって手を差し伸べた。

「ね?」
 ボクは、ニッと笑った奥様の顔に目一杯の感謝を注いだ。支社長様が徐々に足の荷重を緩める。

 手を取って立ち上がればいい。そうしたい。しかし、どうしたことだろう。
 ボクはいつしか、この状況に奇妙な興奮を感じ始めていたのだ。

「キャッ…」
 ボクは、奥様の手を振り払った。そして頬を上気させ、荒い息の下に支社長様に懇願した。

「も……もっと♥」
「…………」

 大神支社長はサッと足を退けた。
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