夫の教えるA~Z
さて。
松田クンを迎え入れ、大神夫妻は再びリビングに舞い戻っていた。
 

私、トーコは今、コーヒーと余りのタコヤキ(松田クンは奇妙な顔をしていたが)を出しながら、そっと会話に聞き耳を立てている……

彼等は、彼の持参した膨大な書類を前にして、難しい仕事のやり取りを始めていた。



「……粉飾決算か」

「は、はい!今度の半期決算で…
部長はそれを支社長の仕業に見せかける気です!
このままこれを本社に提出すれば、支社長は更迭、懲戒処分も有りうると……」

なんと彼は、正義感から上司の不正を伝えに来てくれたのだ。

「…まあ、俺のやり方は気に入らないらしいからな……」
アキトさんは自嘲気味に笑った。
 
「ボクはまだ入ったばかりで……よく分からないんですが…」
松田クンは言いにくそうに、俯いた。

「……前支社長は、叩き上げの人情家で現場第一のいわゆる“イイ人”。
支社の皆に慕われていたそうです。 
まあ、それが悪く転んで大赤字を出したワケですが……その……それで…大神さんは……少しタイプが違うと……」
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