ツインクロス
「警察…?馬鹿な…。警察が私のことを捕まえられる筈がない…」
神岡は、信じられないといった表情で後ずさった。
「…確かにそうだな。『普通の警察』ならな?アンタにしっかり買収されてる(やから)がいるからな」
出入り口を塞ぐように立っている男、並木は言った。
「何…?じゃあ、お前は…普通の警察じゃ…ないとでも言うのか?」
驚愕した表情で、未だに後ずさっている神岡に、並木は笑顔のみで応えて見せた。
次の瞬間。

「ゴチャゴチャうるせェんだよっ!!」

並木を取り囲むように立っていた網代組の男達が、一斉に並木に殴り掛かった。
そこで、廊下側にいた雅耶達も加勢に入る。



目の前は、既に壮絶なバトルと化していて、夏樹は横の壁際に避難していた。
腕を縛られたままの今の自分は、邪魔にしかならないからだ。

(この人達…強い…)

網代組の男達は、スタンガン、ナイフ等を忍ばせていたのか、それぞれ様々な凶器を振り回しているが、そんなものは全く役に立っていなかった。
雅耶の他に、二名…。

(…さっきの男の人と、もう一人…?)

こちらからは、よく見えない。
だが、かなりの腕利きだ。

(でも、何故だろう…。何だか胸騒ぎがする…?)

そのまま、呆然と佇んでいると。
雅耶が一人の男を倒した後、夏樹の元へとやって来た。
「大丈夫かっ?」
「…まさや…」
後ろ手に縛られている夏樹に気付くと、すぐに紐を解きに掛かってくれる。
心底心配した様子の雅耶に、夏樹は申し訳ない気持ちになった。

(…結局、オレはまた雅耶に迷惑掛けてる…)

「…よし、解けた…」
雅耶は解いた紐をそのまま床に落とすと、夏樹の身体をクルッと回転させて自分の方に向けた。
「…あ…ありが…」
『ありがとう』と礼を言い終える前に、ふわり…と、雅耶が覆い被さってくる。
そして…そのまま、そっと抱きしめられた。

「……まさ、や…?」
「…ホントに、無事で良かった…。お前に何かあったら、俺…どうしようかと思った」
小さく呟く雅耶に。
「…ごめん、…雅耶…」
夏樹は目を閉じると、そっと呟いた。

「でも、雅耶は何でここに?…それに、あの人達は…?」
既に全ての男達が床に倒されて、先程の男が何処からか出した縄で男達をぐるぐるに巻いている。
「うん…。色々あってさ、一緒に連れて来てもらったんだ…」
「そう、なんだ…?」
雅耶の言葉に耳を傾けながらも、ふとそちらに視線を向けると。
もう一人の人物がゆっくりと、こちらを振り返った。

(…え…?)

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