無糖バニラ
「……」

「……」


翼とママが沈黙して、


「ふふ、よかった。食欲出たみたいで。お大事にね」


ママが笑って、部屋を出ていった。


パタン、と扉が閉まり、階段を下りていく音が完全に聞こえなくなってから、あたしは布団から顔を出した。


「っぷは……!」


水中から息継ぎをするみたいに、空気を吸い込む。

布団の外は、涼しい。


「お前なぁ、俺が腹鳴らしたみたいになっただろ」

「ご、ごめんってば。だってママの雑炊おいしいんだもん……」


そんな頭の悪い言い訳をすると、


「ふ……」


翼が笑って、しまったと思ったのか、すぐに目をそらされた。
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