無糖バニラ
「……」


あたしは視線をキョロキョロさ迷わせ、意を決して左腕のシャツをまくった。


「仁奈、見て……これ」

「ん?……え!?どうしたの、痛そう!」


長袖シャツに隠された腕には、昔の傷痕。

細長く、皮膚が盛り上がっている。


「ううん、もう全然痛くないんだ。これ、去年の傷だから」

「中学の時?」

「うん……」

「なんか……、刃物で切られた痕とかに見えるんだけど……」


恐る恐る聞いてくる仁奈。

あたしはドキドキと騒ぐ胸を手で押さえた。

思い出すと、まだ震える。


「これはね、翼のことを好きな女子にやられたの」
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