無糖バニラ
痛かったし、怖かった。

あの後、病院から帰ってきてから熱が出てうなされたし。

だけど、本田さんをかばったわけじゃない。


翼が悲しい顔をするから。

ずっとあたしの名前を呼んで、何度も「ごめん」と繰り返すから。


いつもみたいに「バカ」って、笑って欲しいのに。


「その本田さんって、どうしたの?」

「しばらく学校来なかったんだけど、いつの間にか家族で引っ越したみたい」

「そっか……」


仁奈が、ホッと息を吐く。


ここにいないことは分かっているのに、今でもたまに夢に見る。


――『あんたがいるから、翼くんが!消えてよ!』


本田さんは、あたしたちのことを誤解していたのだろう。

ただの幼なじみ。
そんな肩書きじゃ、翼のそばにいることが許されないらしい。
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