無糖バニラ
届くわけがないし、窓も開かない。

それでいい。

朝のこともあって、気まずくなるし。

そう、思っているのに。


「翼……、話したいよ……」


本音を口にした、その時。


サッとカーテンが開いて、翼の顔が見えた。

本人は、下を向いて窓に手をかける。

そして、


「つ、翼!」

「は?」


名前を叫ぶと、翼はようやく顔を上げた。

あたしと目が合って、瞬きをして、ついには表情を固めた。
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