無糖バニラ
寝てる……。


ホッとしたような、残念なような……。


通学用のリュックとコンビニ袋を床に置いて、ベッドのそばに座る。

あ、枕元にスマホ。
ここで返事をくれたんだ。


寝顔を見ている。
ただそれだけのことなのに、なんでだろう。

胸がきゅっと締め付けられて、苦しいのは。


掛け布団から翼の手がはみ出ているのが見えて、その手をとって布団の中に入れる。


あれ?

翼の手って、こんなのだっけ?

あたしの記憶の中では、もっと丸くて小さかったはず。

こんなに、骨張っていて指が長い手じゃなかったのに……――


「――っ!?」


布団の中で突然手を握られ、声にならない悲鳴を上げた。
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