無糖バニラ
翼の目が薄く開いて、ぼんやりした様子であたしの姿を捕らえる。


「この……は……?」


え?今……。


「なにしてんの……」


翼はだるそうに口を開いて、あたしの目を見た。

このはって、言った……?今。

小嶋くんに、あたしの名前は呼ばないとはっきり告げていたその口で。

勘違い?


「ご、ごめん、勝手に入っちゃった……」


あ、泣きそう。

本当に名前を呼ばれたかも分からないのに、それだけで。


「お前は……、俺が風邪引いてても、どんな時でもそばにいたがるよな……、うつるぞ」


熱で辛そうな顔が、やわらかく笑顔に変わる。


つかまれた手が熱い。


今なら、本当に、昔に戻れるのかもしれない。
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