孤独少女~Kiss Me~
「は?何で美雨?」



驚く翔希に解放され、泡のついた手を洗い流し、タオルで拭いながら振り返った。

お兄さんから聞いた話を、躊躇いがちに話すと、頭上から呆れたような溜め息が漏れた。



「……ごめん。もう、えーよ……っ」



話したくないからこそ、出た溜め息でしょ?

もう、何も言わなくて大丈夫。

過去に深入りせずに、私は翔希と夫婦で居られる限り、嫁としての役目を果たして。

美雨さんと会った時は、美雨さんの影に隠れてれば良い。

そうすれば、まだまだ一緒に居られるでしょ?



「悪い。そう言う事やったんやな……。兄貴が悩ませる事言ったな」



「翔希……?」



謝りながら抱き締められ、私は驚きつつ、小さく翔希を呼ぶ。

私の頭を撫でる温かい手。

お兄さんの話を信じてた私。

だけど、愛を感じずには居られない。



「美雨とは何でもない。恋愛感情を持った事もない。俺、あいつの顔がツボで何か笑えてた。でも、兄貴が勘違いしてるとは……。ホンマ、悪かった」



「あ……、いえっ」



人の顔を見て笑うとは、後で叱ろう。

けど、勘違いって、何。

私、1人でモヤモヤして悩んでたんだよ?
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