プリズム!
そんな夏樹の様子に雅耶は一度だけ小さく息を吐くと、今度は夏樹の前にしゃがみ込んで目線を合わせるように顔を覗き込んでくる。

「でも…何処か痛いんだろ?どうして泣いてるのか、ちゃんと話してくれよ。…でなきゃ分からないだろ?」

肩を震わせて涙を零し続ける夏樹が落ち着くのをそのまま静かに待っている。

夏樹は零れる涙はそのままに、何とか言葉を口にした。

「…何でも、ないんだ…。ただ…オレ…っ、自分が許せなくて…っ…。ホントにそれだけ…っ…」



拭うことなく涙をぼろぼろ零して話す夏樹を、雅耶は切なげに見つめていた。

「許せないって、何で?お前、何も悪いことしてないだろ?」

諭すように優しく声を掛ける。

すると、夏樹が再び左右に首を振った。

「ダメだよ…。だめ、なんだ…。どうしても…オレ…女の子らしくなんて、なれなくて…」

「…夏樹…」

「前に…進まないと…ダメなのに…。これで、元通りの…はずなのに、オレ…いつ、までも…中途半端で…っ…」

胸の前で祈るように手を組んで、何かを両手に握り締め、苦しげに呟いている。

「何でだよ?そんなことないだろ?お前…頑張ってるじゃないか。ちゃんと新しい学校でも友達作ったりさ。お前は良くやってると思うよ」

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