プリズム!
先程よりも、もっと顔を真っ赤にしてわたわた焦っている夏樹に。

病人に悪さしている自覚と多少の罪悪感はあるものの、その想いは簡単には止められなくて。

「いいよ。俺にうつして夏樹が早く元気になればいい」

真面目な顔をしてそんなことを言った。

「それで俺が今度熱を出したら、夏樹が看病に来てよ」

「そんなの…無茶苦茶だよ…」

夏樹は困ったような表情を浮かべている。

それにつられる様に雅耶も困ったように微笑むと。

「…ごめん。でも…。好きで好きで…堪らないんだ。こんな風に夏樹とずっと二人で一緒にいられるなら…。俺は病気になる位全然構わない」

「雅耶…」


迷うように瞳を揺らしている夏樹に、再びゆっくりと顔を近付けて真っ直ぐに視線を合わせると。

夏樹は諦めたのか、恥ずかしそうにぎゅっ…と瞳を閉じた。



その後、雅耶は夏樹の傍でかいがいしく世話を焼いていた。

「食欲はあるか?」と聞くと、実は朝から何も食べていないという、ある意味予測通りの答えが返って来て雅耶は苦笑を浮かべたが、熱があることを(あらかじ)め電話で冬樹から聞いていた為、食欲がなくても食べられそうなフルーツやゼリー等を幾つか仕入れて来ていたので、それを出して食べさせたりした。
< 191 / 246 >

この作品をシェア

pagetop