プリズム!
もともと荷物が少ない夏樹の引っ越しは、自家用ワゴン車が1台あれば事足りてしまう。

運転手に雅耶の父の協力を得たことで、業者に頼むことなく何とか自分達の手で引っ越し作業を進めることになった。


「夏樹ちゃんにはお世話になったしね。こんなこと位お安い御用よ♪」

そう言って、雅耶から話を聞いたのか長瀬も手伝いに駆け付けてくれたのだった。



車の側まで行くと、雅耶の父親が分解した組み立て式のベッドの一部を抱えて出してくれていた。

「すみません、おじさん。お休みの所手伝っていただいて…」

夏樹が申し訳なさそうに声を掛けると、

「なぁに、これ位何てことないさ。力仕事は雅耶達、若い奴らに任せておけば大丈夫そうだし。それに、何往復かする覚悟でいた位なのに一度で済んでしまったしね。どうってことないよ。今後も、あまり気負わずに何かあったらいつでも言いなさい」

そう言って、いつもの優しい笑顔を浮かべてくれた。


有り難いと思った。

本当に感謝の気持ちしかない。


雅耶の両親には、まだ『冬樹』である時に再会した。

だが、その日の帰り道に夏樹は神岡達に連れ去られ、その後乗り込んで来た兄の冬樹達の活躍によって例の事件は解決へと繋がったのだ。

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