ラ・ヴィ・アン・ローズ
「もう一杯飲むか?」
恭介さんのグラスも私のグラスもいつの間にか空になっている。
「はい」
「同じのでいいのか?」
「いえ、今度はカンパリオレンジで」
「相変わらず甘いのがお好きで」
「いいじゃないですか」
「ま、顔にはあってる」
「……」
どうせ童顔ですよ。
「お待たせしました」
先ほど見た夕焼けのような綺麗なオレンジ色。
一口飲んで
「うん、美味しい」
甘いんだけどカンパリのほろ苦さとオレンジの酸味が混ざって絶妙な味わい。
カナッペを食べながら飲んでいると
「あら、この曲」
クラシックの曲がさっきまで流れていたんだけど今度の曲はクラシックじゃなく
「ラ・ヴィ・アン・ローズ」
あの時、千景さんが歌っていたシャンソンの名曲。
私の中で今では特別な曲。
目を閉じ静かにピアノに耳を傾ける。
「気に入って頂けましたかな」
「えっ?」
曲が終わり目を開けるとさっきまでとは違い優しい笑顔が私を見ていた。
「もしかして恭介さんが」
「あぁ、リクエストした」
「ありがとうございます。物凄く嬉しい」
私の為にリクエストしてくれたのもだけど、この曲が私の特別だと知っていてくれたことが何より嬉しい。
いつもはからかったり憎まれ口をきくけど、やっぱり恭介さんは優しいんだよね。
そしてこの優しい笑顔を見れるのは妻である私だけ。