夏を殺したクラムボン
「多分、魚じゃねえの。ほら、なんかキラキラしてるしな。いろいろとあったんだろ」
「うわ、テキトー」
詩織が苦笑いし、成海は?と問いかける。
「僕?」
20秒ほどしかないアラームの残り時間を見、成海はプリントの文字を読む。
「……クラムボンは人間。谷川のそばで、人間が人間に殺される場面だと、思った」
周が顔を上げ、鋭く成海を見た。
「なにそれ、殺人ってこと?こわっ、おまえ推理小説読みすぎじゃね?」
浜田が茶化すように言い、成海の肩を叩く。成海は浜田の絡みを適当にあしらい、プリントを机に置いた。
刹那、アラームが教室中に大音量で耳障りな音を撒き散らした。沢田がパンと手を叩き、アラームを止める。
「交流できたか?じゃあ、交流中に俺が見て回って良いと思った人を当てるから、前に名前と考えを書きに来てくれ。まずは、一班全員」
「えー、なんで一班全員!?俺無しでよくね?」
浜田が眉を寄せて沢田に抗議する。教室の中では席の位置ごとに班が決められており、一班は成海たちが所属する班だった。
「一班は全員意見が違ってたからちょうど良いなと思って」
沢田は浜田の抗議を受け流し、再び名前を呼ぶ。
「窪田と、あと真木もな」
「えー、オレ?」
制服を着崩した窪田がしょうがねえなと立ち上がり、真っ先に黒板に向かった。それに続き、成海たちも椅子を軋ませて前に出る。
数本しかない白のチョークが、取り合いになる。