夏を殺したクラムボン



冷房が効いてきた教室で、席に残った生徒たちは前の6人を眺めながら近くの友達と言葉を交わしていた。数十の囁きは騒音となって広まっている。



甲高い音が規則的に鳴った。チョークの粉が黒板に沿って落下していく。やがて、黒板には6つのクラムボンが生まれた。



『魚 浜田』

『波 窪田』

『泡 河野』

『人間 成海』

『プランクトン 真木』

『かわせみ 葉月』



当てられた全員が席に着いたのを確認した沢田は、静かに、と一喝して差し棒を持った。



「ん、6人ともありがとう。他に意見あるか?」



反応はない。教室を見回して挙げられた手の有無を確認し、沢田は差し棒を伸ばした。



「よし、じゃあ一つずつ見ていくか。でもまぁ、中学校じゃ人間って解釈はあんまり見たことがないな。成海、なんで人間だと思った?」



よそ見をしていた成海は声に反応して前を向き、数秒考えてから言った。



「……波とか、自然のものは笑ったり跳ねたりしなさそうだけど、人間はするから。殺したり」

「あー、なるほどな。でも、ここにあるように、かわせみとかプランクトンとか、魚は?笑ったりしないのか」

「……かわせみは魚を殺してるからクラムボンじゃないし、カニは魚が殺される前にクラムボンが死んだって言ってるから。プランクトンは……川にいるかわからないし」

「て、ことはまとめると……」



沢田が苦く笑う。



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