夏を殺したクラムボン
成海とは一言も言葉を交わさぬまま、3日間が流れていった。
相変わらず噂話で忙しい教室の扉を開け、自分の席を見やると、机に伏せて眠る成海とともに、黒い靄が見えた。
……あれはなんだろう。
訝しげに顰蹙すると、ところどころで小さな笑い声が溢れる。教室の一角には、こちらを盗み見ながら数名の女子たちと話す真木 莉央の姿もあった。
莉央の様子が気にかかり、周はやや歩調を早めて机に歩み寄る。
黒い靄は徐々に鮮明になっていき、やがてそれは意味を持って周の視界に飛び込んだ。
『人殺し』
『殺人鬼』
『死ね』
『殺してやる』
周の、艶やかな黒髪が揺れた。
それと同時に、甲高い笑声が周を囲むようにあちこちから響き渡った。
「人殺しのくせに、なんで学校に来てんの?」
莉央が教室の後方に立ち、嘲笑を交えて卓上を凝視する周に呼びかける。周は1つ、ため息を落とすとリュックを机に下ろしながら冷ややかに莉央に視線を送った。
「やだ、人殺しがこっち見てくる」
莉央の言葉に、取り巻きの女子たちが笑った。
……つまらない。
周はリュックを床におろし、机上の落書きを放置して机の中の小説に手を伸ばす。
その瞬間、指先に何かが触れた。