小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜

「ﾅﾅｺ……妊娠した、って……」


どこか他人事みたいに呟くﾊﾙﾄ。


「え…？」


何を言っているのかよくわからなかった。

これを頭の中が真っ白…って言うのかな…？

何も見えない。

考えられない。

ふわふわして、感覚がないの。


私、どこにいるんだっけ…？

あぁ…そう、ホテル…。

ﾊﾙﾄとふたりで、ここでご飯食べて…夜景見て…指輪をもらって…

…愛し合って…

そして…

いつか結婚しよう…って…。




―――…ニンシン？


ナニソレ…？




「…どゅ…こと…？」


それしか出てこない言葉。

「今…５ケ月だって…。」

「え…？」


何言ってるの…？

ﾅﾅｺさんの妊娠は嘘だったんだよ？

そうだよね？
ﾊﾙﾄ…。



「…ﾊﾙﾄ？ﾅﾅｺさん、妊娠してなかったんだよ？ね？」



「…あぁ…。」


ﾊﾙﾄは目を伏せた。


「じゃあ…なんで…？」


わかりかけている恐ろしい現実を問いかける時の悲しいドキドキが私の中を駆け巡っていた。

わかってた。

なんとなく、わかってた…。


でも…

あえて聞いたんだ…。