冷徹社長が溺愛キス!?
「……意味わかんない」
麻里ちゃんは一瞬考えたあと、首を横に振った。
「効率重視なんだって」
「ますます分からないよ。どういうこと?」
早く言えとばかりに麻里ちゃんが急かす。
「えっとね、雨宮だと四文字言わなくちゃならないけど、奈知なら二文字だから効率がいいってことみたい」
麻里ちゃんの目が点になる。
しばらく瞬きもせずに私を見つめたあと、彼女は「何それー」と笑い出した。
笑うこと、かな……?
そして、転がるように声を立てて笑うと、今度は急に真顔になる。
「もしかしたら社長、奈知に気があるんじゃない?」
とんでもないことを言い出した。
「どうしてそうなるの!」
さすがにそこは私も反応早く否定する。
「だって、その理由だと、三木専務のことは加恋って呼ぶだろうし、私だって沢木より麻里って呼ぶはずでしょ」
「うーん……」
言われてみれば、社長が三木専務のことを加恋と呼び捨てにしているという話は聞いたことはない。
麻里ちゃんのこともさっきは“沢木”と名字だった。
でも……。
「社長には三木専務がいるんだよ?」
完璧ともいえる恋人がいるのだから。
それに、三木専務を呼び捨てにしないのは、恋人だから余計に一線を引く意味があるのかもしれないし。
麻里ちゃんも私の最後のひとことに、「あ、そうか」と最も重要なことを思い出したようだった。