冷徹社長が溺愛キス!?

◇◇◇

「雨宮さん、ちょっとよろしいですか?」


総務部長に小さく手招きをされて呼び出されたのは、その日のこと。
お昼まであと三十分というときだった。

同じく呼び出された、四年先輩の園田有紀(そのだ ゆき)さんが大きなお腹を抱えて部長のあとに続く。

私たちが入ったのは、総務部の部屋を出てすぐ左手にある小さな応接室だった。
部長の前に、園田さんとふたり並んで座る。


「雨宮さんもすでにご存知だとは思いますが、園田さんは一ヶ月後に産休に入る予定になっています」

「はい、存じています」


園田さんが嬉しそうに話してくれたのはつい先日のことだ。
入社三年目にして結婚。
トントントンと次々に子宝に恵まれ、今回で三度目の産休だ。

そんな園田さんは、うちの母から言わせると、理想的な結婚出産のスケジュールといえる。
第一子、第二子と男の子が続き、第三子は待望の女の子らしい。


「園田さんには、また総務部に戻って来てほしいと考えています。そこで、育休取得の間、新たな人員は取らないことに決まりました」

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