冷徹社長が溺愛キス!?

「うっ……私が今、一番欲しくない言葉を言わないで、麻里ちゃん」


いたずらに笑いながら言った彼女に、さっそく泣きごとを言ってしまった。

さっき芽生えたはずの挑戦意欲は、いったいどこへ。
それとも、あれは私の錯覚だったのか。
冷静になって考えてみると、やっぱり不安しか浮かんでこない。

麻里ちゃんは「ふふふ」と笑って、自分のお弁当箱からミニトマトを三つも私にくれた。


「わ! いいのー?」

「これあげるから、弱音を吐かないで頑張りなさい」


まるでお母さんのように諭す。

何を隠そう、ミニトマトは私の大好物なのだ。
いつか自宅のベランダで、花を育てる片隅にミニトマトも育てたいと画策している。
私のお弁当箱にも入れてきたけれど、ミニトマトなら何個だっていける。


「うん、頑張る」

「ほんっと、奈知って単純だなぁ」

「え? なぁに?」


いの一番にミニトマトを口に放り込み、口をモゴモゴさせながら聞いたものの、彼女に『なんでもない』と誤魔化された。

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