冷徹社長が溺愛キス!?

◇◇◇

午後七時。
ひとり減り、ふたり減り、気づけば総務部内は、私ひとりだけになっていた。

ラベルシートへの印刷は終わったものの、封筒への貼り付けはまだまだ終わりが見えない。
何日かに分けて行う作業とはいえ、私の仕事のペースを考えると、少し残業したほうがいいだろうと判断したのだ。

麻里ちゃんは、定時の五時半に「お先に」と帰って行った。
身重の園田さんに残業させるわけにはいかず、同じく定時に帰ってもらった。

残業をめったにしたことのない私が、ひとりで残っているなんて、なんだかちょっと新鮮だ。
誰もいないフロアは、感じたことのない静けさに包まれていた。
ココアでも飲んでちょっと休憩しようか。
両腕を広げて大きく伸びをしてから、十階にある休憩室へ行こうと席を立った。

下向きの矢印をタッチすると、二十階に止まっていたエレベーターがゆっくりと降りてくる。
そして、ピンポーンと軽い音が鳴ると同時に扉が開いた。


「あっ……」


一歩足を踏み出して留まる。
ゴールデンウィーク中の実家で、やたらと社長の顔が出現したせいなのか、実物を見てトクンと心臓が弾む。


「奈知か。残業なのか?」

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